依存症による
犯罪
治療の必要性
いわゆる「依存症」に罹患している方には、刑事罰の前に、まずは治療が必要です。何度刑務所に入っても、長い間薬物から離れていても、治療と社会復帰訓練を経なければ、往々にして、社会に戻るとすぐに再犯が起こります。
1 可能な限り、保釈→治療につなぐ
2 身柄拘束中でも可能な範囲の条件反射制御法等を行ってもらう
3 治療の試みを証拠化して裁判に提出する
4 自助グループにつなぐ(社会復帰訓練を行う)
ということが、重要な弁護方針です。
薬物依存
覚せい剤、大麻、シンナー等の規制薬物を継続的に摂取してしまう方は、俗に薬物依存症と言われる病気の状態です。また、毎回酔って電車に乗って痴漢を繰り返してしまうなど、犯罪の背景にアルコール依存症がある場合もあり、この場合も治療が必要なことは言うまでもありません。
こうした俗に薬物依存症やアルコール依存症と言われる病態がある場合、下総精神医療センターや汐ノ宮温泉病院等、全国数カ所で受けられる「条件反射制御法」による治療を推奨しています。
関東の方であれば、下総精神医療センターに入院し治療することを条件に保釈を求め、更に執行猶予判決を得て治療を継続することを目指します。
また実刑が確実で保釈がなかなか認められない場合には、身柄拘束中に可能な範囲で条件反射制御法を行ってもらいます。
「生きづらさ」という根本的な問題
薬物への依存に限らず、様々な対象への依存は、実は、生きづらさを解消するために、その時点でその人が必要とした選択です。
それだけ、社会が生きにくくなっている、他の方法で生きづらさを解消することが難しい、他方で薬物が容易に手に入る、という状況から、薬物依存が増えていると思います。
条件反射制御法は画期的な治療法ですが、確立している薬物への条件付けを解除してくれるだけで、そもそも依存症に陥った根本的な内面的要因である「生きづらさ」をなくすわけではありません。
生きづらさを低減させ、逆に生きやすい場をつくっていくことは、誰にとっても根本的な課題ですが、最善の方法は、人と充分つながることでしょう。
そのために、自助グループの力は欠かせないのです。
特に、生活を共にし、毎日顔を合わせて行う自助グループの中で、互いに支え合い人とつながる経験をすることが、行きづらさを低減し、ふたたび社会の中に出て行く力を取り戻す契機となります。
クレプトマニア
万引きを繰り返す人の中には、経済的利益を得るためというよりも、万引き自体の緊張感と達成感を目的に行うような病的な場合があり、これは「クレプトマニア」と言われる精神病の一種と捉えられています。クレプトマニアの人は、過食や拒食の摂食障害を併発していることが多いとも言われています。
現在、クレプトマニアの治療を行っているのは、赤城高原ホスピタルと、その院長である竹村道夫先生が出張診療を行っている京橋メンタルクリニックであり、自助グループKAにつながることが治療の第一歩です。
保釈して入院または通院での治療やKAへの参加を実現し、その経過を刑事弁護に役立てます。
性依存症
ちかん、のぞき、強制わいせつ、強姦などの性犯罪を繰り返してしまう人は、性依存症の可能性があります。
現在では、グループワーク等のプログラムや認知行動療法を用いて性依存を治療してくれる病院がありますので、保釈を取って治療につなげることを目指します。
また、本人と家族がそれぞれの自助グループにつながることも大切です。